「まなざし」
うす緑色の風船かずらの実のように、感じやすい心には、やすらぎがなければ生きていけない。
ぼくは等身大の人間は描かない。
ひっそりと行儀よく星を見つめる君。
君には街を歩く普通の服は似合わない。
道化師のように華やかな衣装を着せてあげよう。
天使の羽だって付けられるんだ。
君の中には宇宙がある。
宇宙の静けさを身に纏って、修羅の巷の人々にやすらぎを与えておくれ。
ぼくは君に何でもあげる。
真紅の薔薇を飾ろう。
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朽葉色のカーテンを引いたら、コーヒーを淹れよう。
極上の豆をミルで碾いてね。
手回しオルガンの音色のような、カウンターテナーの唄う中世の歌が流れてくる。
太陽が昇ったら、窓を開ける。
君の眼差しは、静かに喜びの色を浮べるだろう。
君の中の宇宙が、これからどんな風に運行するのか、ぼくにも未だ分からない。
(みやざき じろう)
1961年埼玉県生。85〜87年渡欧、フランドル絵画、オペラ、民話を研究(以後89、91、94、95、96年)。9年個展開催(以後4回)。90年日本大学芸術学部美術科卒業。渡辺武夫、中根寛に師事。94年中米に旅行。95年昭和会展昭和会賞受賞。95年Incontro della Nude展(スペッロ市美術館、イタリア)に出品。96年「新潮」挿画担当。他に、眼展、リリシズムの画家展等に出品。現在無所属。
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