Antico Cafe JIRO
















宮崎次郎展

会期/2001年11月21日〜30日 会場/日動画廊本店

会期/2002年1月23日〜31日 会場/名古屋日動画廊


日動画廊記録 >>
「ノスタルジア」
「ノスタルジア」 2000


昼と夜の境界線
「Saudade」というサブタイトルのもと、個展を開催してから二年以上の時が流れた。
屡々、ふと思い立って旅立つ異郷の途上で耳にした、叙情的な調べの中の「Saudade」の響きに心ひかれ、このポルトガル語が、望郷の思いや、そこはかとない後悔の念、誰かに会いたいという切なる願い、友情、或いは、悲しく、然し甘味の漂った記憶などをも意味する、ニュアンスに富んだ多義語であることから愈々気に入って、当時私は、これらの想念を、常に胸中に抱きながら仕事を進めたのだった。
この言葉が醸し出す雰囲気は、以来、私の中で少しずつ広がり、今回の新たな表現の随所にも、更に色濃く沁み渡っている筈である。
また暮れ方の、異国の空の色に触発され、「昼と夜の境界線」というイメージが、画布に向かえば思い浮んでも来る。昼の光の明晰さとも、夜の闇とも異なる、それらが混淆した曖昧の境に、私は、何ということなしに、惹かれ続けて来た。言わば、「夜の門(Les Portes de la nuit)」とでも名付けてみたい空気である。
パリでは、太陽が街の一日に別れを告げてから、宵が訪れるまでの時間がゆるゆると過ぎ、薄闇が少しずつ周囲を支配してゆくが、そのころ、カフェのテラスに座って、ポルトーなどの食前酒を傾けながら、道行く人々を眺めていると、シャンゼリゼでもグランブールヴァールでも、ぱっと一斉に街の燈がともる。
こんな時、一日の昼と夜との二つの劇が交錯して、私の詩情が、最も強く掻き立てられるのである。
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宮崎次郎